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アマテラス

「ターゲットポイント標準2.7セット」

モーターの震える音が耳に飛び込む。
暗いコクピットに浮かび上がるターゲットの矢印がこちらに向かって突進してくる。

数は14機。

スギモトは強く操縦桿を握り締めた。

「ポイント標準2.7ロックオン」

軽いブービー音に混じって自分の深い呼吸音が聞こえる。

深く吸い込み、吐く。

まるで自分の吐き出す空気が、細い糸になって体内から放出される感覚に身を任せ、精神を敵機に集中させていく。

数は14機。

「ゴー」

赤いトリガーをひくと、パワードスーツの主砲が火を噴いた。青い炎は尾を引いて赤く変色しながら放物線を描き、真正面で炸裂する。
たて続きに爆撃音が耳に届いたが、スギモトの集中した精神を乱すほどのものではなかった。

「ヒット。敵機・・・1・・・・2・・・・4機」

右。

スギモトは軽く腰を鎮めてパワードスーツの重心を下げ、すばやく右から突進してくる黒い敵機に向かって標準を合わせる。
距離は10メートル。爆撃を受けてふわりと身体が浮いた。
白い閃光の後から轟音と黒い煙が噴出する。
一瞬視界が飲まれたが、スギモトの集中した精神は乱されない。
打ち抜いた銃の反動を使って左から襲い来る敵機に立て続けにロックする。

「ターゲットポイント標準102・・・113・・・150セット」

確認する管制官の声が届く前に、分厚い装甲を貫いた弾丸が空中で炸裂した。


あと3機。



操縦桿を軽く左に傾けると、スギモトの意に反して足元がふらついた。

「左脚第3ポイントに異常」

重量15トンのパワードスーツが、足元の石を跳ね飛ばして肩膝をついた。
見ると白い煙が膝からふわりと上っている。

被弾。

完全に機能を失った左足を支えに、スギモトは真上に迫った敵機に標準を合わせる。

「ゴー」

ポツポツと白い球体が青い空に輝いて、やがてそれが炸裂して黒い敵機が跳ね飛ぶ。
これで全機撃沈。

ほっと息を吐き出し銃を下げると、バラバラと落ちてくる細かい破片に混じって、敵機の左腕が円を描いて飛んでくる。
右腕でそれを跳ね返すと、機能しない左足に負荷がかかり、スギモトのパワードスーツはあっけなく左に傾いていった。


「お疲れ様です。スギモト軍曹。訓練終了です」

「やれやれ」

無様にごろりと横になって、スギモトは落胆の表情を浮かべた。

「今日は女房の誕生日なんだ。もう帰ってもいいかな」

「大佐から聞いていませんか?今日付けで指令が届くそうですよ?」

「はあ?聞いてないよ。今度はどんな厄介事を押しつける気だ」

「詳しくはベースに帰還してからだそうです。コードは2074・・・」

「2074・・・」

嫌な予感がした。
白兵戦のエースであるスギモトの研ぎ澄まされた六感が、脳内の情報をかき集める。

2074・・・・2074・・・・


軍が、やばいモノを作っている。


そんな根も葉もない噂がちらりと脳裏を掠めた。
どんな時代でも、軍というところは闇を抱えている。それが戦時中であるなら一層その闇は濃い。例え太古の昔に「自衛隊」と呼ばれた平和主義の軍隊であってもだ。実際この国家は有史以来、様々な闇を抱いて生きてきた。

それが、日本という国家を作ったのだ。


スギモトは表情の乏しい上司の痩せた頬を思い出して、小さく肩をすぼめた。

「・・・今日は帰してもらえないかな。女房の誕生日なんだ」

「受理しかねます。軍曹」

「やれやれ」

コックピットのハッチを開けると、初秋の風が砂埃を巻き上げた。無人の訓練用敵機の破片が辺りでちらちら燃えている。


一台のトラックがこちらに向かってくる。ベースからの迎えだった。
どうやらここから脱出して、女房の所に逃走することは困難なようだ。

スギモトはヘルメットのグラスを上げて、迎えにくる少佐に手を振る。
砂で汚れた頬を緩ませて、同僚のエモト少佐が応える。
トラックに乗り込むと、乱暴にUターンしながらエモトは人懐っこい笑顔をスギモトに見せた。

「さすが軍曹。14機の敵機を見事撃沈とはお見事です」

お世辞なのかどうかもわからないほど、エモトの顔は屈託がない。
お世辞を言い合うような仲でもなかった。スギモトは憮然としてシートの中で腕を組む。

「それに・・・すごいじゃないか。すごいパートナーが付くって軍部は噂で持ちきりだぞ」

「パートナー?」

「ああ・・・?聞いてないのか?俺も詳しくは知らんがな・・・・」

ふいにエモトの口元から微笑が消える。



「アマテラス・・・というらしい」



背後で撃墜した機体の破片が二次爆発を起こす音がした。
低い低い爆音は、エモトの言葉とともに、スギモトの脳裏に張り付いて、いつまでもリフレインした。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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やっと読めた(遅っ!)
想像力を最大に働かせて読みます。
次、まってますーー。
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22年6月に娘を出産。
更新途絶えてましたが再開します。

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